異種楽器対談 第3回、第4回
異種楽器対談
オーケストラのプレーヤーは大のお話好きです。楽屋、居酒屋、はたまた本番中のステージで(あ、これは聞かなかったことにしてください。)おしゃべりに夢中です。特に楽しいのは楽器のウンチク。ちょっとのぞいてみましょうか。プレーヤーならではのお話が聞けそうです。なかには少しあやしいものもあるようですが・・・
第3回、第4回 ヴァイオリンの熊谷洋子さん、テューバの大塚哲也さん
────ヴァイオリンの熊谷洋子さんが、テューバの大塚哲也さんになにやら尋ねています。────
──(熊谷)大塚さんとこうやって2人で話した事めったにないですね。
(大塚)そうですね。
――ヴァイオリンの後ろの方からじゃ「おーい、チューバさーん」って感じで。同じ音楽で繋がってても、そういう意味であんまりおつき合いが無かったから、これはすごくいい機会だと思って聞きたい事用意してきました。(笑)
こちらこそ、よろしくお願いします。
――基本的に管楽器の事は、なーんにもわかんないんです。ただ、うちの旦那がアマチュアでホルンを吹いているんですけど、お前は管楽器向きじゃない、お前には吹けないって言われるんだけど。唇の薄い人の方が管楽器に向いているって。チューバはどうなんですか?
どうなんでしょうね。あまり唇の厚い方って確かに金管楽器に向いていないかも。
――大塚さんの唇もすごく薄いですよね。
薄いです。特にホルンとかトランペットって、マウスピースが口に当たる面積がすごく狭い訳で、繊細になってくるから(薄いほうがいいというのは)あるでしょうね。僕らはこういう(大きい)範囲でやっているから。それより、歯とか歯並びですかね。
――あ、歯並びね。よく聞きますね。
面白いもんで、うちのオーケストラの人とかもそうですけど、中学生ぐらいから吹いているじゃないですか。そうすると、体の成長過程でも吹いている訳ですよ。すると(歯が)合ってきちゃうんです。普通東洋人の噛み合わせって、下が後ろにくるんですけど、上下ぴったりになっちゃっているんですよ。身体が楽器に適応してくるんですね。弦楽器とかも、そういうのあると思うんですけど。
――弦楽器はどうかなあ。
トロンボーンの人って、ちっちゃい頃からやっていたら右手が長いでしょ、きっと。
――(笑)そうなんだ。チューバ奏者は、がっしりした体型の方が向いているとか、そういうのあります?女性は?
男女比率からお話しますと、圧倒的に男性ですね。プロならば98%男性じゃないですかね。ただ、音大なんかだと半々くらいなんですよ。特に日本なんかですと学校のブラスバンドに入って何の楽器やろうかってなった時に、女の子は極力エレガントな楽器にまわすじゃないですか。(笑)今はもう男の子そのものがブラスバンドにいなくなってきているんで、講習会で教えに行っても女の子が吹いている事の方が多いですよね。
――じゃあ、吹く事だけに関して言えば、別に身体が大きい方がいいとか、そういう事は無いんだ。
もちろん大きな楽器ですので、肺活量があった方がベターだとは思うんですけど、肺活量って身長っていうか座高で決まるんですよ。僕みたいに横に幾ら広がっても関係ないんで
――そうなんだ。
むしろ、向こうの先生に言われているんですけど「お前ダイエットしろ」って。「その方がもっと身体が広がるよ」って。
――へえ~。チューバを始めたきっかけって何だったんですか。
小学校にブラスバンドというより鼓笛隊がありまして。4年生でトランペット、5年生の時トロンボーン、6年生になった時、一番高い楽器で1本しかないキラキラした大きいチューバに「僕やります」って。自然に吸い寄せられたって感じ。チューバも小学生向けみたいなのがあるんですよ。小さめの。
――えっ、チューバも小さいのがあるの。
多分ヴァイオリンを真似たんだと思うだけど、4分の2、4分の3、4分の5、4分の6ってあるんですよ。
――4分の6~?フルサイズよりでかいってこと?何処が違うんですか。
用途で変わってくるんです。つまり、4分の4が標準サイズって事ですよね。4分の3とかの小さめの楽器だと、アンサンブルやソロをしたり、4分の5はオーケストラ向けで、これがブルックナーやマーラーってなると4分の6っていうのを引っ張り出してくるんですよ。
――楽器が大きくて大変ね。
たまに移動とか公演で暑い日に「なんでチューバやっちゃったんだろう」って。(笑)マンション探す時も。
――そうだよね。
ピッコロだったらねぇ、こう、内ポケットに入れておけるもんね。(笑)
――大塚さんは、この9月からシカゴに留学されるって聞いたんですけど、何か考える所があってなんですか。
理由はいくつかあって。付きたい先生がシカゴに2人もいるのと、僕らブラスプレーヤーにとってはシカゴシンフォニーっていうのは物凄いオーケストラですから。1人はシカゴシンフォニーの先生で、もう1人はノースウェスタン大学っていうのがあって、そこの先生に付きます。音楽を聴くっていう所でも、世界のオーケストラが毎月のように来ますし。
――アメリカ以外の例えばヨーロッパっていう選択は無かったの?
僕の出た大学の先生がケルンで18年吹いていた先生で、ある意味日本なんだけどドイツに留学していたような感じだったんです。ワーグナーのオペラ全部覚えましたし。もうすごい勢いで教えてもらいました。先生には感謝しているんです。そういう意味でアメリカっていうのは、冷たく感じられるかもしれないけど、全部「どうだからだめだ」「今君がやってるのはこうで、この理由はこうで」って分析解析的な教え方なんで、僕ら下地のない日本人にとっても受け入れやすいんじゃないかと。
――1年間ですね。お元気で行ってきて下さい。
(大塚)そうですね。
――ヴァイオリンの後ろの方からじゃ「おーい、チューバさーん」って感じで。同じ音楽で繋がってても、そういう意味であんまりおつき合いが無かったから、これはすごくいい機会だと思って聞きたい事用意してきました。(笑)
こちらこそ、よろしくお願いします。
――基本的に管楽器の事は、なーんにもわかんないんです。ただ、うちの旦那がアマチュアでホルンを吹いているんですけど、お前は管楽器向きじゃない、お前には吹けないって言われるんだけど。唇の薄い人の方が管楽器に向いているって。チューバはどうなんですか?
どうなんでしょうね。あまり唇の厚い方って確かに金管楽器に向いていないかも。
――大塚さんの唇もすごく薄いですよね。
薄いです。特にホルンとかトランペットって、マウスピースが口に当たる面積がすごく狭い訳で、繊細になってくるから(薄いほうがいいというのは)あるでしょうね。僕らはこういう(大きい)範囲でやっているから。それより、歯とか歯並びですかね。
――あ、歯並びね。よく聞きますね。
面白いもんで、うちのオーケストラの人とかもそうですけど、中学生ぐらいから吹いているじゃないですか。そうすると、体の成長過程でも吹いている訳ですよ。すると(歯が)合ってきちゃうんです。普通東洋人の噛み合わせって、下が後ろにくるんですけど、上下ぴったりになっちゃっているんですよ。身体が楽器に適応してくるんですね。弦楽器とかも、そういうのあると思うんですけど。
――弦楽器はどうかなあ。
トロンボーンの人って、ちっちゃい頃からやっていたら右手が長いでしょ、きっと。
――(笑)そうなんだ。チューバ奏者は、がっしりした体型の方が向いているとか、そういうのあります?女性は?
男女比率からお話しますと、圧倒的に男性ですね。プロならば98%男性じゃないですかね。ただ、音大なんかだと半々くらいなんですよ。特に日本なんかですと学校のブラスバンドに入って何の楽器やろうかってなった時に、女の子は極力エレガントな楽器にまわすじゃないですか。(笑)今はもう男の子そのものがブラスバンドにいなくなってきているんで、講習会で教えに行っても女の子が吹いている事の方が多いですよね。
――じゃあ、吹く事だけに関して言えば、別に身体が大きい方がいいとか、そういう事は無いんだ。
もちろん大きな楽器ですので、肺活量があった方がベターだとは思うんですけど、肺活量って身長っていうか座高で決まるんですよ。僕みたいに横に幾ら広がっても関係ないんで
――そうなんだ。
むしろ、向こうの先生に言われているんですけど「お前ダイエットしろ」って。「その方がもっと身体が広がるよ」って。
――へえ~。チューバを始めたきっかけって何だったんですか。
小学校にブラスバンドというより鼓笛隊がありまして。4年生でトランペット、5年生の時トロンボーン、6年生になった時、一番高い楽器で1本しかないキラキラした大きいチューバに「僕やります」って。自然に吸い寄せられたって感じ。チューバも小学生向けみたいなのがあるんですよ。小さめの。
――えっ、チューバも小さいのがあるの。
多分ヴァイオリンを真似たんだと思うだけど、4分の2、4分の3、4分の5、4分の6ってあるんですよ。
――4分の6~?フルサイズよりでかいってこと?何処が違うんですか。
用途で変わってくるんです。つまり、4分の4が標準サイズって事ですよね。4分の3とかの小さめの楽器だと、アンサンブルやソロをしたり、4分の5はオーケストラ向けで、これがブルックナーやマーラーってなると4分の6っていうのを引っ張り出してくるんですよ。
――楽器が大きくて大変ね。
たまに移動とか公演で暑い日に「なんでチューバやっちゃったんだろう」って。(笑)マンション探す時も。
――そうだよね。
ピッコロだったらねぇ、こう、内ポケットに入れておけるもんね。(笑)
――大塚さんは、この9月からシカゴに留学されるって聞いたんですけど、何か考える所があってなんですか。
理由はいくつかあって。付きたい先生がシカゴに2人もいるのと、僕らブラスプレーヤーにとってはシカゴシンフォニーっていうのは物凄いオーケストラですから。1人はシカゴシンフォニーの先生で、もう1人はノースウェスタン大学っていうのがあって、そこの先生に付きます。音楽を聴くっていう所でも、世界のオーケストラが毎月のように来ますし。
――アメリカ以外の例えばヨーロッパっていう選択は無かったの?
僕の出た大学の先生がケルンで18年吹いていた先生で、ある意味日本なんだけどドイツに留学していたような感じだったんです。ワーグナーのオペラ全部覚えましたし。もうすごい勢いで教えてもらいました。先生には感謝しているんです。そういう意味でアメリカっていうのは、冷たく感じられるかもしれないけど、全部「どうだからだめだ」「今君がやってるのはこうで、この理由はこうで」って分析解析的な教え方なんで、僕ら下地のない日本人にとっても受け入れやすいんじゃないかと。
――1年間ですね。お元気で行ってきて下さい。
――「チューバ」って音楽辞典をひらいたら、「古代ローマ時代の円錐状の直管トランペットの名称」「トランペットをラテン語でいうとチューバになる」って書いてあったんだけど。
詳しい事僕もわかんないんですけど、英語に直すと確か「チューブ」なんですよ。「チューバ」っていうのを誰が名付けたのか定かでないんですけども、いわゆる発明品として出来たんです。
――その辞典は、チューバを3つの種類に分けることが出来ると。「テノールチューバ」「ボンバルノチューバ」「大バス型」って書いてあったんだけど、これってホント?
れ、たぶん古めの辞典かな~。(笑)昔は大バス、小バスって言ってた。大バスは僕らが吹いてるタイプ。小バスはテノールチューバって言われていたもので「ユーフォニウム」のことだと思います。「ボンバルディーノ」はなんて言ってたのかちょっとわからない…。
――(チューバのカタログを指さして)これもチューバに入るの?
これはチューバなんスかねえ?「チンバッソ」って言って、たまに借りてきて炸裂してる楽器なんですけど。ヴェルディとかプッチーニが曲を書いてた頃はチューバという音色が頭に無かったんですよ。ドラマティックな場面担当はこの楽器のイメージだった。それを今のチューバでやっちゃうとボワーンとしちゃって。
――じゃあ、そういう時はこの楽器を使って。
パート譜には「チンバッソ」って書いてありますんで。それを想定して書かれた曲はチンバッソでやりたいなと思ってるんです。
――金管楽器って大体何年ぐらいが寿命なんですか。
みんな10年って言ってますよね。でも鳴りがへたるとか、そういう事より、機械の部分ですね。車のエンジンがだいたい10万キロでだめになるように、機械がすり減ってダメになるって感じです。
――いくらメンテナンスしても10年くらい。
金属ですからね。ただ、実際トランペットでもチューバでも乗り潰したっていう人は、ほとんどいないです。その前に気が変わって新しい楽器に買い替える人が多いですね。
――大塚さんは何処の楽器を使ってるんですか。
いろんなサイズでいくつか持ってます。ただ、チューバは面白い事にドイツの楽器しかないんですよ。アメリカの楽器も、あることはあるんですけど…。アメリカのオーケストラのチューバって、みんなドイツの楽器なんです。逆にドイツのメーカーも、頑固オヤジがベルリンフィルで使ってもらうような楽器を作るイメージがありますけど、アメリカで売れるような楽器作ってます。ニューヨークフィルの人をよんで設計させて作るとか。
――じゃあ、演奏者の好みで形が変わったりもするんだ。
そうですね。そこが面白いところですよね。自分の選択で選べますし、指揮者にこれを使えっていわれることもないですし、好きなものを使える。ただ、その為に常に情報を入れてなきゃいけないんですよね。
――チューバって、これからもどんどん改良されていくだろうということですね。
そうです。