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異種楽器対談 第5回、第6回

異種楽器対談

オーケストラのプレーヤーは大のお話好きです。楽屋、居酒屋、はたまた本番中のステージで(あ、これは聞かなかったことにしてください。)おしゃべりに夢中です。特に楽しいのは楽器のウンチク。ちょっとのぞいてみましょうか。プレーヤーならではのお話が聞けそうです。なかには少しあやしいものもあるようですが・・・

第5回、第6回 ヴィオラの長谷川基さん、フルートの芦澤曉男さん

────ヴィオラの長谷川基さんが、フルートの芦澤曉男さんになにやら尋ねています。────
──(長谷川)まず最も基本的なことなんですけど、フルートって木管楽器って言われているじゃないですか。でも、実際金属で出来てますよね。なんでなんですか。
(芦澤)それね、よく説明求められて。実は僕も間違って覚えていたんだけど「昔、木で出来てたから」ってずっとそう思ってたのね。
――でも、今木のフルート使ってる人いますよね。
 うん。その説明が外れてるって訳ではないんだけど、ある人に「発音」音を出す仕組みによって分けられるって聴いたのね。金管は身体自体、口を振動させるじゃない。で、木管楽器っていうのはどの楽器も、リードとか最初の発音が楽器自体にあるということらしいんだ。フルートはリードがないけど、エッジに空気を当てて渦を作って、それで振動させるっていう仕組み。
――木から金属に変わったのっていつ頃なんですか。
 金属の加工技術とか産業革命とか色々関係してると思うんだけど、過渡期で重なってる時代もあったと思うのね。今から150年ぐらい前に、ベームっていう人が現在使われているようなキーのシステムを作って、それから金属管でいろいろ作られる様になった。でも、木のフルートってけっこう魅力感じるんだよねえ。
――やっぱり木の方が管理難しいんですよね。僕の楽器も1年目は故障ばっかりして。日本の気候に合わないから楽器がびっくりしてるって。
 でも、クラリネットもオーボエもファゴットも木製なわけだし、ピッコロも木でしょ。木のフルート、いいよね。でも、高くて今は買えない…。あと、どうしても割れるんじゃないかっていう心配があるんだよね。
――ピッコロとフルートの違いを。
 長さが全然違うよね。ピッコロはフルートの大体半分だから、音域も丸々オクターブ上。指使いも殆ど同じなのね。それで昔、フルート吹いている人はピッコロも簡単に吹けるんだと思っていたの。で、いざ吹いたら全然音でないの。
――口の所同じでしょ?
 同じ同じ。発音の原理同じでしょ。ただ小さいだけだから。だって普通乗用車乗ってて軽自動車運転できるじゃん。そんな感覚でやったら全く音出なくって。最初楽器がおかしいのかと思った。
――何が違うんですか。
 息の量も角度も音程の癖も違うし、僕の奏法が違ってたのかもしれない。オーケストラにエキストラで呼ばれる時も、ピッコロで頼まれることが多いから。楽器買って練習したんだけど、情けないぐらい吹けなくて、先生に罵倒されて(笑)。ピッコロの名手のレッスンも受けたんだけど、クビだとか言われて…。ピッコロにいい思い出ないよ(笑)。
――楽譜って、ここでフルートからピッコロに持ち替えて、とか書いてあるんですか。
 書いてあるよ。
――持ち替えで間違ったこととかあります?
 あるある(笑)しょっちゅう持ち替えが変わったり、指示の字が小さく書いているときなんか訳わかんなくなる。
――オーケストラの中で、僕はいつも舞台のヘリにいるじゃないですか。一番前の低い所に。管楽器のひな壇に乗った景色って全然想像がつかないんですよ。
 オペラの時にファーストヴァイオリンの後ろに座ったことがあるのね。その時に弦楽器の人達ってなんて大変なんだろうと思った。指揮を横から見るから全然わかんないの。フルートって正面だから指揮が見やすいんだよね。
――僕らはそれが普通になっちゃってるから。逆に高い位置にいる感じが分からない。オーケストラ全体が見える訳ですよね。お客さんからも一番正面でよく見えるところですよね。
 でも、丁度指揮者の陰に隠れちゃうんだ(笑)。
――初めてフルートをやったのはいつですか。
 小学6年。僕小学校は仙台だったんだけど、そのころ仙台少年少女合唱隊に入ってたのね。で、その練習場が楽器屋さんの4階にあったの。それで練習が終って親が迎えにくる間、1階の楽器を見るのが毎日楽しみだった。変声期が来て、合唱をやめなきゃいけなくなって、じゃあ何か楽器をっていった時、気に入ってたフルートを。
――じゃあ見た目で。
 うん。その時はフルートの音って具体的に知らなかったんだよね。(笑)
――ピカピカしてきれいだったからとか。
 そうそう。
――フルートって何本の指を使うんですか。
 右手の親指だけがキーを操作しない。あとは全部使う。
――9本。じゃあ9個しか穴無いんですか。
 穴?いくつかなあ。連動して塞がったりするキーもあるから。
――それがわからないんですよね仕組みが。連動して1個押すと2個動くっていうの。逆に複雑じゃないですか。木管楽器は替え指(ある音をちがう指使いで出す)があるでしょう。
 フルートももちろん変え指はあるんだけど。基本的に指使いは他の楽器に比べたら楽なんじゃないかな。だって、ファゴットなんてどっちかの親指は11個もキーを操作しなきゃいけないんでしょ。
――えー。11個ですか!
 信じられないよね。つくづくフルートで良かったって思うよ。(笑)それに他の木管はみんなリードで苦労してるでしょ。フルートは身体の調子が悪ければそれでおしまい。(笑)もう、あきらめがすぐついちゃう。
――メンテナンスはどうしてるんですか。
 年1回ぐらい調整に出すけど、あとは自分で。
――どういう風にするんですか。分解するんですか。
 うん、ネジ式で分解できるようになっていて、ビックリするくらいバラバラになる。そうして、中のサビを取ったりね
――だれかがそのテーブルひっくり返しちゃったら終りですね。
 一度本番前の控え室で組み立てていて、出来た!と思ったらバネかなんかが横にあって。(笑)もう1回やり直しだーって。みんなエンビ服に着替えはじめてて、「おい、大丈夫かっ」って周りがあせってんの。本番3分前に無事完成。
――楽器教室なんかだと、やっぱりピアノが一番多くて、フルートっていうのも多いんですかね。
フルートも先生いっぱいいるからね。楽器としても手軽だし、初心者用ならそれほど値段も高くないし、あと楽譜の読み方が移調ないし。
――ああ、なるほど、それは大きいかも。
 僕全然わかんないもん移調読みって。クラリネットの人や金管の人とかって頭の構造どうなってんのかって思っちゃう。ホルンとか移調読みすごいじゃない。
――僕はB管とかC管とかって一番わからない。
 僕は1オクターブ上げろって言われても間違ったりするもん。(爆笑)それに、なんでト音記号じゃない記号が読めるのかってそれがビックリだよ。
――ヴィオラはハ音記号とト音記号両方。チェロはヘ音記号とハ音記号とト音記号3つ出てきますよね。
 よくあんなの読めるなあ。
――僕らもう指が覚えちゃってる所もあるし。でもフルートの楽譜は五線の上に線が5本も6本も付くじゃないですか。あれは低音系楽器の人分からないですよ。
 いや僕もダメ。(笑)特に手書きの譜面だとズレがさ、ファの位置がレより低かったり。最近あまり複雑だと目がチカチカしちゃってさ。でもそういう楽譜の読みにしても他の楽器に比べてやっぱり手軽。
――他にやってみたい楽器はあります?
 僕はものぐさだから、やっぱりフルートでよかったと思うよ。フルートの大変な部分もいっぱいあるんだけどね。それはまたの機会に。
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