異種楽器対談 第17回、第18回
異種楽器対談
オーケストラのプレーヤーは大のお話好きです。楽屋、居酒屋、はたまた本番中のステージで(あ、これは聞かなかったことにしてください。)おしゃべりに夢中です。特に楽しいのは楽器のウンチク。ちょっとのぞいてみましょうか。プレーヤーならではのお話が聞けそうです。なかには少しあやしいものもあるようですが・・・
第17回、第18回 チェロの八島珠子さん、ホルンの須田一之さん
────チェロの八島珠子さんが、ホルンの須田一之さんになにやら尋ねています。────
――(八島)最近暑いですよね。
(須田)暑いですね。
――須田さんにとっては過酷な。
冬以外は暑いって感じですからね。
――須田さんはいつからそんなに汗かきなんですか。
大きくなったのは中学校過ぎてから。まぁ本格的に大きくなったのは高校2年生からなんですけどね。ホルンは中学校1年生からブラバンで始めたんですよ。最初は痩せてましたね。
――えー何キロぐらいだったんですか。
普通の人くらいですよ、身長はあんまり変わってないんですけど。昔は結構後輩とかにモテたりしたんですよ。
――あらあら(笑)
これはみんなに誰にも話してないことで。
――(笑)秘密で!その頃の状態に戻ろうとは。
戻ってるかもしれない今日この頃なんですけど。まぁ、それはそうとしてホルンなんですけど。
――はい(笑) チェロとホルンて結構同じところ多いですよね。
上手(かみて)にホルン行かないじゃない、下手(しもて)がほとんどなんだけど、ものによっては上手もいいなと思ったりするんだよね。
――でもベルが後ろ向いてるから。
ベルがみんなの方を向いてるから、音を喰らうのが嫌っていう人たちもいるからねぇ。なかなか簡単には…。
――前向きのベルのホルンてないんですか。
あ、ありますよ。知る人ぞ知るメロフォン。そうそう。
――メロフォンはどこに行っちゃったんですか。
メロフォンはいます。古い学校に行ったら結構います。まだいます(笑)
――キーはトランペットみたいになってますよね。
ピストンですね。あと、マウスピースもホルンと違うから、どっちかといういと、ホルンというより、トランペット族なんですよね。
――なんでホルンだけマウスピースがあんな形なんですか。
ホルンはもともと音楽的に使われたのが最初ではなくて、信号用とか、合図用がスタートなんです。角笛が起源。だから吹き口が固められてたんですよね。山伏が吹いてる法螺貝も同じような起こりですね、合図のためです。それを考えると、チェロはいっつも優雅に弾いてていいなぁって。
――優雅でもないけどね(笑)ホルンで、もうひとつ疑問なことがあるんですけど、上吹き、下吹きってありますよね。あれ、いつから決まるんですか。
根本的には大学でホルン学んでも、君は上だとか下だとか言うことはないです。ただ、オーケストラでは、上と下は別のパートっていう見方をしてるので、オーディションや入団の契約で決まります。
――じゃあ下吹きの人が上吹きになるってことは、オーケストラに入っちゃうとないことなんですか。
うん。よほどの緊急のことがない限りはないのが普通ですね、逆もね。仕事が違いすぎるというか、技術的にも体力的にも、常に下吹いている人が突然上吹くって言うのはすごく労力がいるので、難しいとされていますね。
――ホルンはいつも偶数なわけではないんですか。
うん、ベートーヴェンの「エロイカ」は3本。ドヴォルザークのチェロコンチェルトも3本。
――そのときの上下は。
チェロコンチェルトの場合は、1番だけを上にして2、3番を下にする場合と、1、2を上にして3を下にする場合と、いろんな分け方がある。解釈の問題なんだけれども、音域的には難しいものじゃないので、いろいろな組み合わせがあります。「エロイカ」の場合は、何年か前の定期でやりましたね。そのときは1番は上、2番は下、3番は上という解釈でやりました。ホルンは基本的には古典時代は2本、今は4本で動くことが多いですよね。上と下半々に分けることが多いです。
――普通の感覚だと、上って言ったら1、2番て感じがするんだけど、ホルンだけは1と3、2と4って分けますよね。
これも解釈なんだけど、例えば9月にブルックナーの7番のシンフォニーやりますよね。この曲の場合はもちろん1番ホルンは上吹きですけども、2番ホルンに関しては上と解釈して、音域にも考えて上の人をあてがうことが結構多いし、その方が望ましいかもしれない。1番との絡みとかもあるから。
――解釈するときはパートの中で解釈するんですか。
もちろん。パートの中でいろいろな判断をして、それを実行に移せるかどうかですね。
――指揮者にこうして欲しいといわれてやるわけではないんですか。
もちろんそれは各方面で相談してやらなきゃいけないものですね。話し合いですね。
――ホルンはいざというときにおいしいメロディが出てきますよね。
まぁ僕にしてみたらそれはありがた迷惑な話で。
――(笑)吹いてて気持いいぞーとかないんですか。
ない。
――ないんですか?!管楽器の人ってそういうところでみんなおいしいと思ってると思ってました。
違うんです。4人いるとね、実際1番は確かにソロも多いし目立つ感じがするんですけど、下にソロがあったり、3番にソロがあったりいろいろだし、西洋音楽はハーモニーが伴うからホルンは2本ないし3本、4本あって初めてできるアンサンブル楽器です。結局一人では何もできない楽器だよね。
――シューマンでしたっけ、「オーケストラの心」ってホルンのこと言ってたのは。
そう。シューマンの時代にホルンは大改革を遂げるんです、構造上の。それより前のは、右手でベルをふさいだり開けたりして音程をいじってた。それがこの時代にバルブ、いわゆるロータリーという指が開発される。で、曲の難易度がすごくアップして、シューマンの有名な曲に「4本のホルンのためのコンチェルト」っていうのがあるんですけど、それは技術的にホルンの最高峰なんです。なかなかやる機会はないと思います。で、これがいわゆる今世間一般に言われている「フレンチホルン」という名をもって世界中に広まったわけです。
――「フレンチホルン」っていうのは、ドイツ語圏でも「フレンチホルン」のままなんですか。
ドイツ語では「バルトホルン」って言って、「森のホルン」っていう意味になりますね。さっき元々ホルンは合図用って言ったけど、馬に乗って狩りのときに合図出してたんだよね。肩にかけて右手で持ち、吹きながら後ろの人たちに合図を出してたと思うんだ。昔のホルン吹きは恐らく楽器を右手で持ったんだと思う。
――ホルンだけ左手でバルブ押さえますよね。
その名残りからきてるといわれてますよね。だから完成度としては一番低い楽器。
――原始的な楽器ですね。
変革を遂げてきたといっても、そこはホルンは難しいといわれる所以かもしれないね。すごく癖があるというか。
――倍音が多いですよね。
多いねぇ。それを改良してミステイクがなくなるようになったんだけど、それでも名残りは大きいよね。昔からのつながりから脱皮できない。
――中学校のときのブラスバンドだと、まともなホルンの音は聴いたことがなかったんですよ。私サックスだったんだけど隣にホルンがいて、ウンパッウンパッってやってるんだけど、濁った和音しか出てこなくて、変な音の楽器だと思って…今はホルンはいいなって。
みなさんおっしゃることなんですよね。ブラスバンドのホルンの役目っていうのは、ウンパッウンパッしかないんですよ。ホルンって吹くまでが難しい楽器なんですよ。吹いてからどう音を出すかっていうのがすごく難しいために、初心者の人でどういう音なのか、どういうふうに吹けばいいのかわからない人が多いかもしれませんね。だからきちんとした指導をされるべきであろうし、しっかり練習してきちんとハーモニーをとれると、ものすごい美しいサウンドを作れる楽器なんだけれども、そこらへんが吹奏楽のレベルでは指導しにくい楽器、専門的な指導者がしっかりついてやらせたほうがいい楽器だと思います。顧問の先生が四苦八苦してるって話、たまに聞きますよね。
――ブラスバンドでホルンでたまにメロディが出てくると、ユーフォニウムとかサックスでメロディかぶせますよね。
かぶせるっていう言い方もありますけど、俗っぽく言うとそうやってごまかしてしまうとか…結構多いと思う。オケはそれができないからね。チェロさん、かぶしてくださいとか、あり得ませんからね。
――(笑)そうですね。
ホルンで朗々と一人でメロディずっと吹いてるってあんまりないんですよ。確かにソロの多い楽器ではあるんですけど、でも単発で終わる場合多いんです。単発で効果がなかったとか。
――えーっ、そうかなぁ…。ホルンてすごく朗々としたイメージがあるんですけど。
例えばどういう曲?
――ブラームスとか。「ターンタタンター!」(交響曲第1番の第4楽章、始まってまもなくのホルンのテーマ。)
そうですね。この曲はホルン4本いるんですけど、前の二人と後ろの二人は管が恐らく違ってたと思うんです。こないだのコンクールでもブラームスの1番ピアノコンチェルトやりましたけど、あれも前と後ろで管が違うんです。だから同じソロの形が出ますけど、調が違ってるんです。1番のシンフォニーは、山の遠くから聞こえてくるアルプホルン(アルペンホルン)のメロディ、昔は合図として決まったメロディなので、それをそのまま曲に取り入れたんです。ブラームスはホルン吹きにとってはすごいなぁという作曲家だと思います。何でかと言うと、4本の楽器すべてに対していろんな役割をピシッと決められているので、だからなかなかプレーヤーが気を抜けない。まぁ抜いちゃいけないんだけど、気が休まらないというか。
リヒャルト・シュトラウスなんか、チェロとホルンが突然メロディを同時に奏でたりしますよね。リヒャルト・シュトラウスって、お父さんがフランス・シュトラウスという有名なホルン奏者だったんです。当時ではトップスターだったんですけども、その影響を受けて、ホルン協奏曲第1番っていうのを17歳のときに書いたんです。この曲とっても長くて、作曲してからお父さんにものすごく怒られたって言い伝えがあるけど。
――(笑)
こんなのお前、吹けるわけないだろう…みたいな感じでいわれたらしい。
――お父さんがとっても上手だからそういう曲書いたわけではないんだ。
彼の世界があった。お父さんのホルンを聴いてはいたでしょうけど、そこから彼独自の音楽性が育ったことは間違いないですね。そういうことがあって、リヒャルト・シュトラウスでのホルンの活躍度って高いですよね。
――ホルンって大きい音は任せろって感じですよね。反響板にもあたるしね。
実情は金管楽器の中で一番大きな音が出るってされてるんですよね。抵抗があるから。もちろん自分で吹いてても思うんですけれども。
――やっぱり弱音が難しいんですよね。
仕事が難しいんですよね。金管でもあるし木管でもあるし、それから弦楽器でもある。オーケストレーションを見てるとよくわかるんですけども。要するに全部のことをやってるんです。だから、金管木管休みでもホルンだけ動いてたりとか。
――なじみやすい音だからでしょうね、他の楽器と。ヴィオラ、チェロとファゴットとトロンボーンって似たようなことやってる場合が多いですよね。
そうだね。ファゴット特に多いね。今の位置って隣が高音域の楽器なんだよね。ホルンからいきなり高音域の楽器にいっちゃってるから、自分のアンテナからすると不都合であったりする場合がいっぱいある。全部が全部じゃないけど、低音の人たちといたいってこともあるでしょうし。
――座る席が違うと考え方が変わりますよね。同じ曲でも。
だからうちのオーケストラも、今までみたいにときどき上手下手を換えるとお客さまにしてみると面白く楽しめるっていうのがあると思いますね。各指揮者がいろんなアイディアを出してくださるんですが。
――同じ曲を連続して位置を換えてやったりするのもおもしろいでしょうね。
おもしろいでしょうね。ブルックナーのシンフォニーなんてホルンをたくさん使うことが多いんですけど、指揮者のアイディアでいろいろ動きます。
――チェロは動いても3ヶ所ですからね。でも1stヴァイオリンの隣に行くってのはぜんぜん違う世界ですよね。
違いますか。
――ぜんぜん違います。フルートの前とか、1stヴァイオリンの隣っていうのは、今まで聴いてた感じとよりどころにするところが変わっちゃいますから。
ホルンも同じですね。
――でも周りもきっとそう思っているんでしょうね(笑)
だから直前に位置を換えられたりとかいうのは避けたい部分ありますね。
――たかが席ってお思いでしょうが、重要ですよね。
自分に影響がなくても周りに影響あったりするかもしれないから。
――動揺しますよね。
ところで、珠ちゃんは趣味は何ですか。
――趣味ですか?前住んでた家には庭があって、畑をやってましたけど。畑はいいですよぉ。オケで疲れて帰っても草むしって、ミミズが出てきたら「あっち行っててね。」ってどかして。和みますね。今は引っ越してそれができないので、模様替えとか。
これだけ特殊な職業で、人様にはあまり稼動してないように見られがちですけど、特殊能力を使ってるので休みって重要ですよね。休み方とかって。僕は子どもがちっちゃいので最近は田んぼに。
――何捕りに?どじょう?
もちろん。今家の水槽にどじょうだのハヤって小魚とか。イモリも飼ってますし、エビも。
――うちにこないだクワガタが来ました。
あ、来た?
――網戸についてました。
貴重ですよ。ポイントってあるんですけど、なかなか大変なんですよ。仙台も離れたら田んぼたくさんあるんだけど、こんな身近で生き物たくさん捕れるんだっていう感動はありますね。
――田んぼが遊び場かぁ。いいですね。
でもまぁ釣りぐらいがいいですよ。飼ったら大変ですよ。家内がキャーキャー言ってますもんね(笑)
――ときどきトロンボーンの人が(楽器を)焼いたりしてるじゃないですか、ホルンはやるんですか。
もちろん。焼いたりして刺激を与えるんですよ。
――焼くっていうのは、弦楽器から考えたらあり得ないですよ。
パーツを焼いて金属に調整入れるんですよね。鍛えるっていう。僕やったことないですけど。やらないと思いますけど。
――弦楽器でそんなことしたらね。あ、でも昔いましたね。乾燥室に楽器入れて鳴るようにして何個も楽器ダメにした人とか、楽器を鳴るようにするためにずっと鳴らしっぱなしに、機械で鳴らしてっていう人とか。
どの楽器もそうなんだけど、楽器を鍛えるっていうことよりも、楽器によって自分が鍛えられることもあるから、そういうことも重要ですよね。もちろん管楽器も吹きやすいのを吹くんだけど、完全に吹きやすいのがためになるかっていう問題もあるし。
――いやー、いい楽器欲しいですねー。
あと健康も大切ですね。
――おやつ最近は食べてないんですか。
おやつ食べてないですね。自分の年齢と毎年来る健康診断書に揉まれて。将来的に考えたら健康であったほうがいいでしょうからね。
――最近歩いてるとか。
コンクールの最中は半分以上歩いて帰りました。暑かったです。
――結果は出ましたか。
結果は出てないです。仕事のストレスが落ちたぐらいで。結局で3歩進んで2歩下がるみたいなもんですよ。なかなか難しいんですよ。なんでもこつこつやるのが、練習もそうですけどね。健康もこつこつ。いい方向に展開できるように努力したいと。演奏もそうですけど、お客さまに来てもらえるようにがんばっていきたいと思っているんです。
みなさんおっしゃることなんですよね。ブラスバンドのホルンの役目っていうのは、ウンパッウンパッしかないんですよ。ホルンって吹くまでが難しい楽器なんですよ。吹いてからどう音を出すかっていうのがすごく難しいために、初心者の人でどういう音なのか、どういうふうに吹けばいいのかわからない人が多いかもしれませんね。だからきちんとした指導をされるべきであろうし、しっかり練習してきちんとハーモニーをとれると、ものすごい美しいサウンドを作れる楽器なんだけれども、そこらへんが吹奏楽のレベルでは指導しにくい楽器、専門的な指導者がしっかりついてやらせたほうがいい楽器だと思います。顧問の先生が四苦八苦してるって話、たまに聞きますよね。
――ブラスバンドでホルンでたまにメロディが出てくると、ユーフォニウムとかサックスでメロディかぶせますよね。
かぶせるっていう言い方もありますけど、俗っぽく言うとそうやってごまかしてしまうとか…結構多いと思う。オケはそれができないからね。チェロさん、かぶしてくださいとか、あり得ませんからね。
――(笑)そうですね。
ホルンで朗々と一人でメロディずっと吹いてるってあんまりないんですよ。確かにソロの多い楽器ではあるんですけど、でも単発で終わる場合多いんです。単発で効果がなかったとか。
――えーっ、そうかなぁ…。ホルンてすごく朗々としたイメージがあるんですけど。
例えばどういう曲?
――ブラームスとか。「ターンタタンター!」(交響曲第1番の第4楽章、始まってまもなくのホルンのテーマ。)
そうですね。この曲はホルン4本いるんですけど、前の二人と後ろの二人は管が恐らく違ってたと思うんです。こないだのコンクールでもブラームスの1番ピアノコンチェルトやりましたけど、あれも前と後ろで管が違うんです。だから同じソロの形が出ますけど、調が違ってるんです。1番のシンフォニーは、山の遠くから聞こえてくるアルプホルン(アルペンホルン)のメロディ、昔は合図として決まったメロディなので、それをそのまま曲に取り入れたんです。ブラームスはホルン吹きにとってはすごいなぁという作曲家だと思います。何でかと言うと、4本の楽器すべてに対していろんな役割をピシッと決められているので、だからなかなかプレーヤーが気を抜けない。まぁ抜いちゃいけないんだけど、気が休まらないというか。
リヒャルト・シュトラウスなんか、チェロとホルンが突然メロディを同時に奏でたりしますよね。リヒャルト・シュトラウスって、お父さんがフランス・シュトラウスという有名なホルン奏者だったんです。当時ではトップスターだったんですけども、その影響を受けて、ホルン協奏曲第1番っていうのを17歳のときに書いたんです。この曲とっても長くて、作曲してからお父さんにものすごく怒られたって言い伝えがあるけど。
――(笑)
こんなのお前、吹けるわけないだろう…みたいな感じでいわれたらしい。
――お父さんがとっても上手だからそういう曲書いたわけではないんだ。
彼の世界があった。お父さんのホルンを聴いてはいたでしょうけど、そこから彼独自の音楽性が育ったことは間違いないですね。そういうことがあって、リヒャルト・シュトラウスでのホルンの活躍度って高いですよね。
――ホルンって大きい音は任せろって感じですよね。反響板にもあたるしね。
実情は金管楽器の中で一番大きな音が出るってされてるんですよね。抵抗があるから。もちろん自分で吹いてても思うんですけれども。
――やっぱり弱音が難しいんですよね。
仕事が難しいんですよね。金管でもあるし木管でもあるし、それから弦楽器でもある。オーケストレーションを見てるとよくわかるんですけども。要するに全部のことをやってるんです。だから、金管木管休みでもホルンだけ動いてたりとか。
――なじみやすい音だからでしょうね、他の楽器と。ヴィオラ、チェロとファゴットとトロンボーンって似たようなことやってる場合が多いですよね。
そうだね。ファゴット特に多いね。今の位置って隣が高音域の楽器なんだよね。ホルンからいきなり高音域の楽器にいっちゃってるから、自分のアンテナからすると不都合であったりする場合がいっぱいある。全部が全部じゃないけど、低音の人たちといたいってこともあるでしょうし。
――座る席が違うと考え方が変わりますよね。同じ曲でも。
だからうちのオーケストラも、今までみたいにときどき上手下手を換えるとお客さまにしてみると面白く楽しめるっていうのがあると思いますね。各指揮者がいろんなアイディアを出してくださるんですが。
――同じ曲を連続して位置を換えてやったりするのもおもしろいでしょうね。
おもしろいでしょうね。ブルックナーのシンフォニーなんてホルンをたくさん使うことが多いんですけど、指揮者のアイディアでいろいろ動きます。
――チェロは動いても3ヶ所ですからね。でも1stヴァイオリンの隣に行くってのはぜんぜん違う世界ですよね。
違いますか。
――ぜんぜん違います。フルートの前とか、1stヴァイオリンの隣っていうのは、今まで聴いてた感じとよりどころにするところが変わっちゃいますから。
ホルンも同じですね。
――でも周りもきっとそう思っているんでしょうね(笑)
だから直前に位置を換えられたりとかいうのは避けたい部分ありますね。
――たかが席ってお思いでしょうが、重要ですよね。
自分に影響がなくても周りに影響あったりするかもしれないから。
――動揺しますよね。
ところで、珠ちゃんは趣味は何ですか。
――趣味ですか?前住んでた家には庭があって、畑をやってましたけど。畑はいいですよぉ。オケで疲れて帰っても草むしって、ミミズが出てきたら「あっち行っててね。」ってどかして。和みますね。今は引っ越してそれができないので、模様替えとか。
これだけ特殊な職業で、人様にはあまり稼動してないように見られがちですけど、特殊能力を使ってるので休みって重要ですよね。休み方とかって。僕は子どもがちっちゃいので最近は田んぼに。
――何捕りに?どじょう?
もちろん。今家の水槽にどじょうだのハヤって小魚とか。イモリも飼ってますし、エビも。
――うちにこないだクワガタが来ました。
あ、来た?
――網戸についてました。
貴重ですよ。ポイントってあるんですけど、なかなか大変なんですよ。仙台も離れたら田んぼたくさんあるんだけど、こんな身近で生き物たくさん捕れるんだっていう感動はありますね。
――田んぼが遊び場かぁ。いいですね。
でもまぁ釣りぐらいがいいですよ。飼ったら大変ですよ。家内がキャーキャー言ってますもんね(笑)
――ときどきトロンボーンの人が(楽器を)焼いたりしてるじゃないですか、ホルンはやるんですか。
もちろん。焼いたりして刺激を与えるんですよ。
――焼くっていうのは、弦楽器から考えたらあり得ないですよ。
パーツを焼いて金属に調整入れるんですよね。鍛えるっていう。僕やったことないですけど。やらないと思いますけど。
――弦楽器でそんなことしたらね。あ、でも昔いましたね。乾燥室に楽器入れて鳴るようにして何個も楽器ダメにした人とか、楽器を鳴るようにするためにずっと鳴らしっぱなしに、機械で鳴らしてっていう人とか。
どの楽器もそうなんだけど、楽器を鍛えるっていうことよりも、楽器によって自分が鍛えられることもあるから、そういうことも重要ですよね。もちろん管楽器も吹きやすいのを吹くんだけど、完全に吹きやすいのがためになるかっていう問題もあるし。
――いやー、いい楽器欲しいですねー。
あと健康も大切ですね。
――おやつ最近は食べてないんですか。
おやつ食べてないですね。自分の年齢と毎年来る健康診断書に揉まれて。将来的に考えたら健康であったほうがいいでしょうからね。
――最近歩いてるとか。
コンクールの最中は半分以上歩いて帰りました。暑かったです。
――結果は出ましたか。
結果は出てないです。仕事のストレスが落ちたぐらいで。結局で3歩進んで2歩下がるみたいなもんですよ。なかなか難しいんですよ。なんでもこつこつやるのが、練習もそうですけどね。健康もこつこつ。いい方向に展開できるように努力したいと。演奏もそうですけど、お客さまに来てもらえるようにがんばっていきたいと思っているんです。